古い願いの棚卸し|もう叶えなくていい望みを見分ける

その願い、まだ欲しいですか。
五年前、十年前に、強く願っていたことを、今、もう一度、心の中で思い出してみてください。
「あの会社に転職したい」「あの人と付き合いたい」「あの資格を取りたい」。当時は、寝ても起きても、頭の中にあったはずの願いです。
今、それを思い出して、心は、どう動きますか。
まだ強く惹かれますか。それとも、なんとなく、もう昔のことのように感じますか。
多くの人は、この問いを、一度も自分に向けたことがありません。願いというものは、立てた後、特に見直されることなく、ずっと「叶えるべきもの」として、頭の片隅に残り続けてしまうことが、よくあるのです。
昔の願いが、今の自分に合わなくなることもある
人は、変わっていきます。
五年前の自分と、今の自分は、同じ人間でありながら、興味も、価値観も、優先順位も、少しずつ変化しているはずです。
であれば、五年前に立てた願いが、今の自分にも、まったく同じ強さで当てはまる、という保証はありません。
なぜ、このことが、見過ごされやすいのでしょうか。
おそらく、願いを「立てる」ことには、多くの注目が向けられる一方で、願いを「見直す」ことには、あまり意識が向けられないからです。一度書いたビジョンボードや、一度立てた目標は、特に疑問を持たれることなく、そのまま、心の中の「達成すべきリスト」に残り続けてしまいます。
古い願いが、今も心から望むものであれば、そのまま大切に育てていけばいい。でも、もし、当時の状況や気持ちから生まれた願いで、今は、もうそれほど惹かれていないとしたら、それを、ずっと抱え続ける必要はありません。
叶っていない願いを失敗にしない
ここで、一つ、大切なことを確認しておきます。
古い願いを見直すとき、「叶っていない」という事実に、つい、焦点が当たりがちです。「あの願い、結局叶えられなかった」と、自分を、どこか責めるような気持ちになることもあるかもしれません。
でも、見直しの目的は、過去の自分を評価することではありません。
叶わなかった願いは、失敗の証拠ではなく、ただ、時間とともに、その願いの位置づけが変わった、という事実があるだけです。状況が変わった。優先順位が変わった。新しい願いが、その場所に取って代わった。理由は、いろいろあるはずです。
「叶えられなかった自分」として見るのではなく、「その願いを、今の自分に合わせて、整理し直している自分」として見てあげてください。
本音の願いと、過去の執着を分ける
ここで、もう一つ、問いを向けてみましょう。
その古い願いは、今も「欲しい」と感じるものでしょうか。それとも、「まだ叶えていないから、なんとなく気になっている」だけのものでしょうか。
この二つは、似ているようで、まったく違うものです。
前者は、今も心から望んでいる、本音の願いです。後者は、願いそのものというより、「未完成のまま終わっていることへの、引っかかり」かもしれません。
未完成のまま終わったことに、引っかかりを感じるのは、自然なことです。けれど、その引っかかりを解消するために、必ずしも、その願いを叶える必要はありません。
「これは、もう叶えなくていい」と、自分の中で、丁寧に区切りをつけることでも、その引っかかりは、十分に解消されることがあります。
今も心が動く願いだけを残す
では、どうやって、本音の願いと、過去の執着を、見分けていけばいいのでしょうか。
一つの目安があります。
その願いを、今、思い浮かべたときに、心が、軽く、前向きに動くか。それとも、ただ、重く、なんとなく気になるだけか。
軽く、前向きに動くものは、今も大切な、本音の願いである可能性が高いです。重く、気になるだけのものは、もう、手放してもいい、過去の執着である可能性があります。
すべての古い願いを、無理に分類しようとしなくてかまいません。今、思いついた範囲で、いくつか確認してみるだけで十分です。
古い願いに感謝して閉じるワーク
最後に、古い願いを見直すための、簡単なワークをご紹介します。
まず、五年前、あるいは、もっと前に、強く願っていたことを、いくつか書き出してみてください。
それぞれについて、こう問いかけてみます。「今、これを思い浮かべると、心は、軽く動くか、重く感じるか」。
軽く動くものには、「これは、今も育てていきたい願い」として、印をつけます。重く感じるものには、こう書いてみてください。「この願いは、ここまで、私と一緒に過ごしてくれた。ありがとう。ここで、いったん区切りをつけます」。
書き終えたら、その紙を、そっと閉じます。
すべての願いを、永遠に持ち続ける必要はありません。本当に今も大切な願いだけを、丁寧に選び直していく。それが、新しい願いのための、心の余白を作る、静かな整理になります。





