願いを叶える前の「慣らし期間」|豊かさ・愛・成功に少しずつ馴染む

長年、安定した収入が増えることを願っていた男性に、ある日、大きな契約の話が舞い込んできました。
これまでの収入の、何倍にもなる金額です。普通であれば、心から喜べる出来事のはずでした。
ところが、その話を聞いた瞬間、彼の頭の中に、最初に浮かんだのは、喜びではなく、こんな考えでした。「こんな金額、自分にふさわしいんだろうか」「急にこんなにもらったら、何かおかしなことになるんじゃないか」。
彼は、結局、契約の条件を、自分から少し下げる提案をしてしまいました。後から振り返ると、特に下げる必要のない条件だったと、本人も認めています。
なぜ、長年願っていたはずのことが、実際に近づいてきたとき、こんなにも、ブレーキをかけてしまったのでしょうか。
大きな願いほど、心が慣れる時間が必要
私たちの心には、「今まで経験してきた範囲」というものがあります。長年、ある一定の収入の範囲で暮らしてきた人にとって、その範囲は、心にとっての「いつもの場所」になっています。
大きな願いが、現実に近づいてくるとき、それは、心にとっての「いつもの場所」から、大きく外れた状態に飛び込むことを意味します。先ほどの男性にとって、これまでの何倍もの収入は、頭で考えれば「嬉しいこと」のはずでしたが、心にとっては、「経験したことのない、未知の場所」でもあったのです。
未知の場所に飛び込むとき、人の心は、喜びだけでなく、警戒心も、一緒に働かせます。これは、願いが叶うことへの抵抗ではなく、大きな変化に対する、ごく自然な、心の防衛的な反応です。
急に受け取ると怖くなる理由
なぜ、急な変化が、怖さを引き起こすのでしょうか。
これは、これまでの記事でも触れてきた、変化のスピードと、心のペースのずれと、同じ仕組みです。ただ、ここでは、特に「大きさ」という観点から、もう少し詳しく見てみましょう。
先ほどの男性のケースで言えば、収入が、これまでの何倍にもなるということは、生活のあらゆる部分に、影響が及ぶ可能性がある、大きな変化です。住む場所、付き合う人、お金の使い方、将来の計画。これらすべてが、一度に変わる可能性がある。
心は、こうした大きな変化を、一度に処理することに、慣れていません。だからこそ、変化が大きいほど、それに比例して、警戒心も大きくなりやすいのです。
小さな豊かさ・小さな愛・小さな成功を練習する
ここで、大切な視点があります。大きな願いを、いきなり大きな形で受け取ることに怖さがあるなら、その手前に、「小さな形で、少しずつ慣れていく期間」を、意識的に作ることができます。
先ほどの男性であれば、いきなり大きな契約を受け取る前に、それより小さな規模の、少し条件の良い仕事を、何度か経験してみることが、一つの方法になります。
愛についても、同じことが言えます。いきなり、深く満たされた関係を願う前に、まずは、小さな親切や、小さな優しさを、日常の中で、少しずつ受け取る練習をしてみる。
成功についても同様です。大きな成果を願う前に、小さな成果を、その都度、ちゃんと認めて、受け取る練習を重ねていく。
これらの小さな練習が、やがてやってくる、より大きな豊かさや、愛や、成功を、怖さに飲まれずに、受け取れる心の状態を、少しずつ作っていきます。
願いを受け取る器を少しずつ広げる
「器」という言葉を使って、この感覚を、もう少し具体的に説明してみます。
心には、それぞれ、今、受け取れる量の「器」があります。長年、小さな器で過ごしてきた人に、いきなり、その器をはるかに超える量のものが届くと、器そのものが、その量に対応できず、混乱が起きてしまいます。
先ほどの男性も、長年使ってきた「器」が、今回の契約の規模には、まだ慣れていなかったのです。
器は、急に大きくすることはできませんが、少しずつ、確実に、広げていくことができます。小さな豊かさを受け取る経験を重ねるたびに、器は、少しずつ、その分だけ大きくなっていきます。
急がずに、今の器のサイズに合った範囲で、確実に受け取りを重ねていく。それが、結果的に、より大きな願いを、安心して受け取れる土台を作っていくことになります。
慣らし期間に使う受け取り許可ワーク
最後に、大きな願いに向かう前の、慣らし期間に使える、簡単なワークをご紹介します。
まず、今、自分が望んでいる、大きな願いを、一つ思い浮かべます。
次に、その願いの、ずっと小さなバージョンを、考えてみます。たとえば、「収入が大きく増える」という願いであれば、「今月、いつもより少し多く受け取る」という、小さなバージョンを考えます。
その小さなバージョンが、実際に起きたとき、それを、怖がらずに、丁寧に受け取る練習をしてみます。「これくらいなら、受け取っても大丈夫」と、自分に向けて、確認するように。
この練習を、繰り返していくことで、受け取る器は、少しずつ、確実に広がっていきます。先ほどの男性も、もし、この慣らし期間を、もう少し意識的に過ごしていたら、あの大きな契約の話を、怖さからではなく、安心の中で受け取れていたかもしれません。
願いは、大きいまま、いきなり受け取らなくても構いません。小さく、確実に、慣れていく。それが、最終的に、大きな願いを、安心して迎えるための、もっとも丁寧な道筋になります。




