願いの途中経過を祝う方法|完成前の小さな実りに気づく

資格試験に向けて、半年間勉強を続けていた男性がいました。
模試の点数は、少しずつ上がっていました。最初の模試では合格ラインに遠く及ばなかったものが、三回目の模試では、合格ラインの少し下まで近づいていました。
それでも、彼は、その変化を、ほとんど喜んでいませんでした。家族が「だいぶ点数が上がったね」と声をかけても、「でも、まだ受かってないから」と、表情を変えずに答えていたそうです。
彼にとっての「祝うべきこと」は、最終的な合格、その一点だけでした。それ以外のすべての変化は、「まだ途中」というカテゴリーに入れられ、喜びの対象にはなっていなかったのです。
結果として、彼は、半年間という長い時間を、一度も自分を労うことなく、ただ緊張の中で過ごし続けることになりました。最終的に試験に合格したとき、安堵はあったものの、なぜか、思っていたほどの喜びを感じられなかったと、後で振り返っていました。
叶った・叶っていないだけで見ない
多くの人は、願いについて、「叶った」か「叶っていない」かの、二つのカテゴリーでしか、出来事を見ていません。
先ほどの男性のケースで言えば、模試の点数が、最初の回から三回目の回までに、確かに上がっていました。これは、紛れもない変化であり、半年間の努力が、形になって表れていた証拠でした。
けれど、「合格」という最終的なゴールだけを基準にしていたため、その途中の変化は、「叶っていない」という、たった一つのカテゴリーの中に、まとめて入れられてしまっていたのです。
願いというものは、多くの場合、ある日いきなり叶うわけではなく、少しずつ、形を変えながら近づいていくものです。その過程にある、たくさんの小さな変化を、「まだ叶っていない」という言葉で、一括りにしてしまうと、半年、一年という長い時間を、喜びのない時間として過ごすことになってしまいます。
途中経過にも、ちゃんと受け取りがある
途中経過には、最終的な結果とは別の、それ自体の価値があります。
先ほどの男性の場合であれば、点数が上がったということは、単に「合格に近づいた」という意味だけではありません。半年前にはわからなかった問題が、わかるようになった。半年前には持っていなかった知識が、今は身についている。これらは、合格という結果が出るかどうかとは関係なく、すでに、確かに起きた変化です。
途中経過を祝うというのは、「まだ完成していないものを、無理に完成したことにする」という意味ではありません。「今、ここまで進んだこと自体に、すでに価値がある」と、その時点での変化を、そのまま認めるということです。
最終的な結果がどうなるかにかかわらず、途中で起きた変化には、それ自体の重みがあります。それを見過ごさずに、その都度、受け取っていくことができれば、願いに向かう時間そのものが、ずっと違った質感になっていきます。
小さな変化を拾うと流れが見えやすくなる
途中経過に気づく練習をすると、もう一つの利点があります。それは、自分が進んでいる方向や、流れの良し悪しが、見えやすくなることです。
先ほどの男性が、もし三回の模試の点数を、毎回、丁寧に振り返っていたら、「この勉強法は、自分に合っている」「このペースなら、本番までに間に合いそうだ」という、具体的な手がかりを、もっと早く得られていたかもしれません。
最終的な結果だけを見ていると、合格するまでは、ずっと「わからない」状態が続きます。けれど、途中の小さな変化に目を向けると、「今、自分はこういう方向に進んでいる」という感覚を、結果が出る前から、少しずつ持てるようになります。
これは、不安を和らげるだけでなく、今のやり方を続けるべきか、少し調整すべきかを判断するための、実用的な手がかりにもなります。
未完成の自分を祝っていい
ここで、一つ、大切なことをお伝えします。途中経過を祝うことは、結果に対する期待を下げることでも、まだ達成していないことを、なかったことにすることでもありません。
未完成の状態にある自分を、そのまま、今の状態として認めて、その中にある進歩を、丁寧に見つけてあげる。これが、途中経過を祝うということの、本当の意味です。
先ほどの男性も、もし、模試の点数が上がった日に、「今日はお祝いに、好きなものを食べよう」というような、小さな労いの時間を持てていたら、半年間という時間の過ごし方は、もう少し違ったものになっていたかもしれません。
合格という最終的な完成形だけを祝うのではなく、その途中にいる、まだ未完成の自分のことも、ちゃんと労ってあげる。これは、結果を軽んじることではなく、結果に向かう過程そのものを、大切に扱うということです。
途中経過を記録する夜ノート
最後に、途中経過に気づくための、簡単な記録方法をご紹介します。
願いに向かって進んでいるあいだ、週に一度くらいのペースで、こんな問いに答えてみてください。
「先週と比べて、何か小さく変わったことはあるだろうか」
「今、できるようになったことの中で、半年前にはできなかったことはあるだろうか」
「この変化に対して、自分に、どんな労いの言葉をかけてあげたいだろうか」
最終的な結果が出るまでの時間は、思っているより長くなることもあります。その長い時間の中で、何度も、こうした小さな振り返りを挟んでいくことで、願いに向かう日々そのものが、緊張だけの時間から、少しずつ実りを感じられる時間へと、変わっていきます。





